日韓「ことばの達人・トークセッション」 の内容 まずは、日本の中の韓国語と韓国の中の日本語です。 街角インタビューの様子を映像で紹介しながら検証してみたところ日本で知られている韓国語は 「アンニョンハセヨ」「サランヘヨ」「カムサハムニダ」「マシッソヨ」などに偏りが見えたものの 韓国で知られている日本語は「こんにちは」「ありがとうございます」「てんぷら」「すし」「赤字」 「縄張り」「きれい」「非常に」など多岐にわたりました。 もちろん、過去の歴史の影響もあっての結果だとは思いますが、これに関する二人のトーク内容は次のようなものでした。 イム:「『チング』という映画を見ると、やくざ用語の中にも『親分』『縄張り』『したばり』などの日本語が残っている」 梅津:「韓国の『したばり』という言葉は、日本語の『したっぱ』という言葉が、韓国風に変化した言葉だろう」 イム:「『したばり』が日本では違う意味になると初めて知った。ちなみに『した』という言葉だけだと、助手やアシスタント のことを下げずんでみる言葉として韓国では使われる」 梅津:「以前韓国に行った時にカラオケに行ったが、韓国の方が歌舞伎用語が由来の『十八番』は、『シッパルボン』と自国語 のように使っていたことに驚いた」 イム:「KBSでは、このような日本語起源の言葉を使わないように指導しており、例えば『十八番』は『愛唱歌』と言い換えているし、 国としてそのような方針を立てているので昔はよく使われていた『ジャブドン(座布団)』も最近の若い人には通じないケースも増えてきた」 梅津:「韓国では日本文化の解放後、多くの日本文化が韓国にも広まり、最近では日本語の『感じ』という言葉を使った若者言葉が生まれたようだが」 イム:「『간지(カンジ)』+『나다 (ナダ : 出る)』=『간지나다 (カンジナダ)』として使われ、センスがある、イケてる、という意味で使われている。 『간지(カンジ)』+『ナム(남 : 男)』=『간지남 (カンジナム)』は、単に格好のいい男性ではなくて、センスある男性という意味で使われる」 この「カンジ」の韓国語化についても、韓国の若者に街角インタビューをしたところ「伝えたいニュアンスが韓国語で見つからないときは、 それもありだと思う」と答えた人もいましたが、「学校で禁止されているし、正しい韓国語を使っていきたい」「言葉の乱れにつながる」 など否定的な意見が多かったようです。 次の話題は、外来語の受け入れ姿勢や「正しい言葉」についての議論です。 梅津アナウンサーの番組で「行く」の読み方について、「いく」が正しいのか「ゆく」が正しいのかを街角の方々の意見も聴きながら 検証する映像が流れました。 結局は「現在はどちらも許容」しており、梅津アナウンサーは「『正しい言葉』の定義は何なのか、いつの時代のものが正しい言葉なのか、 それを決めることはできない。 言葉は時代とともに変わるし、私がNHKに入社した当時と今とではアクセントも異なる言葉がある。 グローバル化した今の時代には、表現しきれない言葉がある場合、それが外来語にあったりすれば、或いは最近は方言の再評価もされているので、 このような言葉から見出されるのであれば、受け入れるのもいいと思う。 もともと、『てんぷら』も外来語、日本人は昔から外来語をうまく取り入れてきた。 阪神大震災の時に『ライフライン』という言葉が使われ、国立国語研究所では日本語化できないかと「生活線」という言葉を提示したが定着しなかった」 と語りました。 一方、韓国の番組はKBSの「正しい言葉、きれいな言葉」の一部を紹介、韓国語の語彙、文法などの乱れを紹介して、それを正していくという 趣旨の番組で紹介された内容は、あまりにも多い外来語を韓国語で表現するのはどうかというものでした。 韓国国立国語院がどのように韓国語で表現できるかを公募し、その中から選択して国民に提示するというもので例えば、 「pop-up窓」⇒「알림창(お知らせ窓)」、「レシピ」⇒「조리법 (調理法)」などが紹介されました。 イムアナウンサーは 「日本に来てテレビなどを見ていると、外来語があまりにも多すぎて驚いた。 韓国では世代間の意思疎通が問題なくできるためにも、言葉の乱れを正したり、外来語の国語化に努めており、『正しい言葉、きれいな言葉』の 番組も視聴率はよく、参考になった、勉強になったという肯定的な意見が多い。 梅津さんの意見にも一理はあるものの、方言などについても、模範となる標準語を提示していかないと最北端の人と済州島に住む人が意思疎通 できなくなってしまう。 外来語を受け入れるにしても、無条件的に、受動的に受け入れるのではなくしっかりと主体性を持って能動的に受け入れるべき。 韓国では過去の辛い歴史もあって、自国の言葉を守るという意識が強い」と語りました。 トーク終了後の質疑応答も質問が次から次へと現れ、中でも面白かった質問を紹介すると「『온라인(オンライン)』という単語を発音するとき、 『온나인』が正しいのか、『올라인』が正しいのか。ニュースなどを見ていても 同じKBSのアナウンサーでも、ある人は『온나인』、ある人は『올라인』だった」と日本人なのに流暢な韓国語で質問、これに対しイムアナウンサーは 「まずは、KBSアナウンサーが間違った発音をしてお詫び申し上げます。 正しくは『온나인』です」と回答しました。